実用的であれ*: D-Wave、製品拡充とクロスプラットフォームのロードマップを発表

量子コンピューティング企業がパフォーマンスアップデート、新しいハイブリッドソルバーの導入、および製品の拡充を発表。アニーリングモデルとゲートモデルの両方の量子コンピュータを提供する唯一のプロバイダーとなる。


ブリティッシュコロンビア州バービナー発, Oct. 06, 2021 (GLOBE NEWSWIRE) -- 量子コンピューティングシステム、ソフトウェア、およびサービスで業界をリードするD-Waveシステムズ (D-Wave Systems Inc.) は本日、同社の年次ユーザーカンファレンスであるQubitsにおいて、Advantage™量子システムのパフォーマンスアップデート、同社のLeap™量子クラウドサービスの新しいハイブリッドソルバー、およびアニーリングモデルとゲートモデルの両方の量子コンピュータを含む次世代量子コンピューティングプラットフォームのプレビューを発表した。今回の製品リリースとロードマップは、現在および将来にわたって顧客にあらゆる種類の量子ソリューションを提供し続けることで、導入、使用、および顧客価値の向上を促進することを目指すものである。

本日より提供:

  • Advantageの提供開始からわずか1年、新たな量子処理ユニット (QPU) を使用したパフォーマンスアップデートを、Leap量子クラウドサービスで本日より提供する。5000個以上の量子ビットと15通りの連結を備えたシステムをベースに、Advantageのパフォーマンスアップデートでは、大規模で複雑な問題をより高い精度で解くことを可能にする数々の改良が施されており、特定のクラスの問題について70%の時間でより良い結果を得られるようになっている。
  • D-Waveは、Leapの量子ハイブリッドソルバーシリーズに新たに加わった制約付き二次モデル (CQM) ソルバーを発表した。CQMソルバーは、問題の制約をソルバーに組み込み、ユーザーは制約付き問題を簡略化して表現できるメリットがある。これにより、顧客が制約条件を利用して解決できる問題の幅と規模が大幅に拡大し、企業は古典システムと量子システムにまたがるようなさらに大きな問題を定式化して、複雑なビジネス問題に最適な答えを見出すことができるようになる。

将来への展望–Clarityロードマップ:
Clarity (クラリティ) のコードネームで呼ばれるこの新しいロードマップは、画期的な技術革新と強力で実用的な量子システム、ソフトウェア、ツールを市場に提供してきたD-Waveの20年近い実績に基づいており、同社は、統合されたフルスタックの量子プラットフォームを介してアニーリングモデルとゲートモデルの両方の量子コンピュータを提供する唯一の量子コンピューティング企業となる。

Clarityのロードマップには以下が含まれている:

  • 新しいトポロジーで20通りの連結を可能にする新設計の量子ビットを搭載した次世代型Advantage 2 量子システム。Advantage 2 QPUには7000以上の量子ビットが含まれ、多層ファブリケーションスタックにおける量子コヒーレンスの最新技術を用いており、システムの量子力学的なパワーをさらに活用して、より良い解決策をより速く見つけることができる。
  • 業界初の拡張性と実用性に優れた誤り訂正ゲートモデル計算システムの開発に向けた新たな取り組み。
  • ユースケースを拡大して量子リソースと従来のリソースの最高の組み合わせを実現する、より強力なハイブリッドソルバー
  • クロスプラットフォームのオープンソース開発ツールにより、顧客は1つのツールプラットフォームに投資して複数の量子システムを使用することができる。

量子アニーリングによる最適化の促進:
量子アニーリングは、現在と将来の両方の最適化のために独自に設計されたものである。実際、最近の論文では、最適化問題におけるゲートモデルシステムの古典的な処理オーバーヘッドと性能の低さにより、このクラスの問題に有効ではないことが示されている。(例:「Applying quantum algorithms to constraint satisfaction problems」(仮訳:制約充足問題への量子アルゴリズムの適用)1 Noise-Induced Barren Plateaus in Variational Quantum Algorithms 」(仮訳:変分量子アルゴリズムにおけるノイズによる致命的な限界)2および「Training variational quantum algorithms is NP-hard -- even for logarithmically many qubits and free fermionic systems」(仮訳:変分量子アルゴリズムの学習は、対数的多数の量子ビットや自由フェルミオンシステムでもNP困難)3)。D-Waveのアニーリング量子コンピューティング技術への継続的な取り組みと投資により、パフォーマンスが加速され、顧客は、複雑な最適化問題に対してより良い解決策を得るための能力が拡大される。

D-Waveが量子アニーリング技術の向上に力を入れることで、最適化に関心のあるユーザーは継続的に恩恵を受ける。また、幅広い材料科学への応用、5Gやワイヤレスのユースケース、機械学習モデルのトレーニングなど、アニーリングをベースにした新たな応用が可能になる。

ゲートモデルのユースケースへの展開:
同社は、量子システムをシミュレーションするためのソリューションを求めるユーザーを対象に、新たなゲートモデル量子コンピューティングに取り組んでいる。ゲートモデル量子システムに手を広げることで、D-Waveの量子コンピューティング製品は、産業界のライフサイクルに影響を与える。製薬の分野では、ゲートモデルシステムが創薬の助けとなる一方、アニーリングシステムは患者の臨床試験の最適化を保証し、製造においてはゲートモデルシステムで新しいメタ材料が設計される。また、量子アニーリングを用いて工場の自動化を進めれば、新製品をより効率的に市場に投入することが可能になる。そのため、Clarityは拡張性と量子プロセッサアーキテクチャの解決に重点を置いている。どちらも、実用的なゲートモデル技術を市場に投入し、アニーリング量子コンピューティングの能力を拡大するうえでの重要な課題である。

今日から開始:
D-WaveのLeap量子クラウドサービスの利用を本日開始する企業、政府、開発者は、AdvantageのパフォーマンスアップデートとCQMソルバーの恩恵を受け、作成中のハイブリッド量子アプリケーションを今すぐ構築することができる。Clarityのロードマップには、デュアルパスのハードウェアとクロスプラットフォームサービス、ソフトウェア、およびツールが含まれており、将来的にはさらに多くの量子ユースケースに対応する見込みである。顧客は、柔軟性のある豊富な量子ソリューションを求めており、量子への投資が現在のビジネスにおいて健全に機能することを期待する一方で、長期的に信頼できるソリューションを必要としている。馴染みのあるプログラミング言語と親しみやすいインターフェイスを備えた共通のツールを使用することで、開始時および作成中の量子アプリケーションのポートフォリオの拡張時のいずれにおいても、使いやすさを維持することができる。

D-Waveは、アニーリングおよびゲートモデルシステムなどの製品ポートフォリオを拡張することで、このクロスプラットフォームの顧客ニーズに対応する初の量子コンピューティング企業となる。

ユーリヒ総合研究機構 (Forschungszentrum Jülich) の「量子情報処理」のグループリーダーであるクリステル・ミヒエルセン (Prof. Dr. Kristel Michielsen) 博士は次のように述べている。「D-WaveのAdvantageシステムは、量子力学を活用したコンピューティングの実践において世界をリードする量子技術に成長しました。D-Waveは、自社の技術を量子アニーリングの要件に限定したことにより、この優位性を実現しました。すでに成功を収めているプラットフォームから、D-Waveは今後、拡張性と実用性に優れた初の誤り訂正ゲートモデル量子計算システムを開発するという新たな取り組みにより、汎用量子計算の分野へと飛躍します。この重要な一歩により、D-Waveは将来の用途が見込まれる市場全体をカバーすることが可能になり、また、D-Waveはユーリッヒとこれまで以上に重要なパートナーとなって、量子研究でタッグを組み、実用的な量子コンピューティングをさらに発展させることになるでしょう。」

D-WaveのCEO、アラン・バラッツ (Alan Baratz) は次のように述べている。「お客様は、量子コンピュータを使用して困難な問題を解決に導くことを望んでいます。新しいAdvantageのパフォーマンスアップデートと量子ハイブリッドソルバーの提供は、継続的な製品提供に向けた当社の徹底的な取り組みを示しています。また、過去約20年間で学び、築き上げたことをもとに、量子プラットフォームのロードマップを作成しました。このロードマップは、最適化問題に対するアニーリング量子コンピューティングのメリットをさらに高めると同時に、他の問題群への当社の展開能力を強化させるものです。Clarityは、お客様が求めてきたものを形にしたものです。量子技術に対する当社のフルスタックアプローチは、チップ製造からシステム開発、ハイブリッドソフトウェアソルバーから堅牢なオープンソース開発ツールまで、すべてを網羅しています。これは、当社が、定期的な製品イノベーションを提供し、クロスプラットフォームスタックを迅速に市場に投入できる世界で唯一の企業であることを意味します。これぞ、実用的です。」

Clarityの詳細については、今後開催されるウェビナーで知ることができる。こちらを閲覧されたい。D-Waveの使用を開始して、量子コンピューティングに搭載されたプロフェッショナルサービス、D-Wave Launchの詳細を知りたい方は、こちらをクリック。

*実用的:

  • 「理論やアイデアではなく、実際に何かを行ったり使用したりすることに取り組むこと」
  • 「(アイデア、計画、または方法が) 実際の状況で成功する可能性が高い、または効果的である、実現可能であること」

D-Waveシステムズについて

D-Waveは、量子コンピューティングシステム、ソフトウェア、サービスを開発、提供するトップ企業で、世界で初めて商用量子コンピュータを提供したサプライヤーであり、アニーリング量子コンピュータとゲートモデル量子コンピュータの両方を開発する唯一の企業でもある。同社は量子コンピューティングの能力を世界的に広めることを使命としている。その使命遂行に向けて、ロジスティクス、人工知能、材料科学、創薬、スケジューリング、サイバーセキュリティ、故障検出、財務モデリングなど多様な問題に対処する実用的な量子アプリケーションを通じて、顧客に価値を提供している。D-Waveのシステムは、NEC、フォルクスワーゲン (Volkswagen)、デンソー (DENSO)、ロッキード・マーティン (Lockheed Martin)、USC、ロスアラモス国立研究所 (Los Alamos National Laboratory) など、世界で最も先進的な組織に採用されている。本社はカナダのバンクーバー近郊で、カリフォルニア州パロアルトを拠点として、米国で事業を展開している。公務員年金投資委員会 (PSP Investments)、ゴールドマン・サックス (Goldman Sachs)、BDCキャピタル (BDC Capital)、日本電気 (NEC Corp.)、イージスグループパートナー (Aegis Group Partners)、In-Q-Telなどの優良投資基盤を擁する。詳しくは、www.dwavesys.comを閲覧されたい。

問い合わせ先
D-Waveシステム
dwave@launchsquad.com 


1 E. Campbell, A. Khurana, A. Montenaro, “Applying quantum algorithms to constraint satisfaction problems”, Quantum 3, 167 (2019).
2 Wang et al., “Noise induced barren plateaus in variational quantum algorithms” (2021)
3 M. Bittel and L. Kliesch, “Training variational quantum algorithms is NP-hard --- even for logarithmically many qubits and free fermionic systems” (2021)