更新 -- D-Wave、エキゾチック磁性の量子シミュレーションで性能面の優位性を実証

フルプログラム可能なアニーリング量子コンピュータが、実用的なアプリケーションで従来型CPUの300万倍のスピードアップを達成


ブリティッシュコロンビア州バービナー発, Feb. 20, 2021 (GLOBE NEWSWIRE) -- 量子コンピューティングシステム、ソフトウェア、サービスの先進企業であるD-Waveシステム (D-Wave Systems Inc.)は本日、グーグル (Google) の科学者と共同で画期的な研究成果を発表した。この研究では、シミュレーション規模と問題の難易度の両面で計算性能の優位性を実証し、従来型の手法の300万倍以上の改善を確認した。この研究では特に、現実世界で使用する実用的なアプリケーションで、2016年のノーベル物理学賞の背景にあるトポロジー現象をシミュレーションしている。材料における複雑な量子シミュレーションでこの性能面での優位性を実証したことは、量子コンピューティングのアプリケーションを前進させる上で有意義な一歩となる。

D-Waveとグーグルの科学者によるこの研究では、量子効果を利用することで、数千単位の量子ビットを必要とする大規模な問題において、D-Waveプロセッサで計算性能が向上することも実証している。複数のD-Waveプロセッサで実施した最近の実験は、既存の量子コンピュータでこれまでに行われた最大の量子シミュレーションである。  

幾何学的フラストレーション状態にある磁石の量子シミュレーションにおけるパス積分モンテカルロ法を超えるスケーリングのメリット (Scaling advantage over path-integral Monte Carlo in quantum simulation of geometrically frustrated magnets)」という論文が、『ネイチャーコミュニケーションズ (Nature Communications)』誌 (DOI 10.1038/s41467-021-20901-5、2021年2月18日) に掲載された。D-Waveの研究者は、D-Wave 2000Q™システムをプログラムし、人工スピンを使用して2次元フラストレーションを与えた量子磁石をモデル化した。この磁石の行動は、ノーベル賞を受賞した理論物理学者のバディム・ベレジンスキー (Vadim Berezinskii)、J・マイケル・コステリッツ (J. Michael Kosterlitz)、デビッド・サウレス (David Thouless) による研究で言及されている。彼らは、1970年代に非自明的なトポロジー特性を特徴とする新しい物質相を予測した。今回の新しい研究は、D-Waveチームが2018年に『ネイチャー (Nature)』誌で発表した「1,800個の量子ビットのプログラム可能な格子におけるトポロジー現象の観測 (Observation of topological phenomena in a programmable lattice of 1,800 qubits)」 (Vol.560、第7719号、2018822) という画期的な研究に続くものである。この最新の論文では、D-Waveの研究者が、グーグルの協力研究者とともに、D-Waveの低ノイズプロセッサを使用して優れた性能を達成し、これまで観測されなかったプロセッサのダイナミクスに関する貴重なデータを収集している。

D-Waveでこの研究の主任研究者を務めたアンドリュー・キング (Andrew King) は次のように述べている。「この研究は、D-Waveプロセッサで量子効果が計算性能の向上をもたらす非常に明確な証拠となります。磁石をトポロジカルな結び目とし、解ける様子を観測することで、通常は速すぎて観測できないダイナミクスを初めて詳細に確認できました。私たちが観測したのは、期待していた温度やサイズのスケーリングの優位性とともに、絶対的に膨大なメリットです。このシミュレーションは難題でした。科学者たちは、私たちも比較検討したアルゴリズムを使用してすでにこの問題に取り組んでいましたが、今回の研究は大きなマイルストーンとなり、今後の展開の重要な基盤となります。このシミュレーションはD-Waveの低ノイズプロセッサがなければ不可能だったでしょう」

スイス連邦工科大学チューリッヒ校 (ETH Zürich) およびスイス連邦工科大学ローザンヌ校 (EPF Lausanne) の物理学教授兼パウル・シェラー研究所の放射光科学部門 (Photon Science Division of the Paul Scherrer Institute) 責任者であるガブリエル・エプリ (Gabriel Aeppli) 博士は次のように述べている。「計算における量子の優位性の研究はますます活発になっています。これは純粋な進歩が見られる特別な問題があるからです。こうした問題は物理学者にとっても不自然に見えるかもしれませんが、D-Waveシステム、グーグル、サイモン・フレイザー大学 (Simon Fraser University) の共同研究をまとめたこの論文は、特定の量子磁石の平衡状態を見つけるという、より「実用的」な問題において、特殊目的のプロセッサを使用した量子アニーリングで従来のシミュレーションを上回る優性があることを示しています。この研究結果は驚きでした。量子アニーリングには、従来のプロセッサが採用しているパス積分モンテカルロプログラムを上回る本質的な優位性はないと多くの人が考えていたからです」

東京工業大学・科学技術創成研究院教授の西森秀稔 (Hidetoshi Nishimori) は次のように述べている。「新たな量子テクノロジーは、従来の手法を現実世界の問題解決に使用しなくなったときに、初めて実用的なツールとして成熟します。この論文では、複雑な材料のダイナミックなプロパティをシミュレーションする従来の計算手法を凌駕する量子アニーラのスケーリングメリットの明確なエビデンスを提示することで、新たな量子テクノロジーの発展に貢献する重要な一歩を記しています。チームを心から称賛したいと思います」

D-Wave CEOのアラン・バラッツ (Alan Baratz) は次のように述べている。「こうした複雑な現象を確実に実証したことで、D-Waveの量子コンピュータのプログラマブル性と柔軟性をさらに証明できました。しかし、おそらくより重要なのは、人工的な問題あるいは「トリック」問題で実証したのではないということです。業界標準のシミュレーションツールに対して、実際の物理的な問題で優位性を証明し、D-Waveプロセッサの実用的な価値を示すことができました。私たちは、科学を発展させ、システムやテクノロジーの性能を高めるという2つの使命を常に掲げています。この2つの使命をまっとうすることで、お客様が現実世界でビジネス的な価値をもたらすアプリケーションを開発できるようにサポートします。私たちのチームが達成した科学的なブレークスルーは、この2つの使命と一致するものであり、今日の量子コンピューティングから得られる新たな価値を実証する成果と言えます」

ネイチャーコミュニケーションズ』誌で発表した科学的な成果は、D-Waveの継続的な取り組みをさらに裏付けている。D-Waveは、世界トップクラスの顧客とともに、250以上の初期量子コンピューティングアプリケーションを開発し、その一部は、製造、ロジスティクス、製薬、ライフサイエンス、小売、金融サービスなど、さまざまな業界で本番環境向けのアプリケーションとして試験運用されている。2020年9月、D-Waveは、Leap™量子クラウドサービスを通じて、次世代のAdvantage™量子システムをリリースした。このシステムでは、5,000以上の量子ビットと15通りの量子連結とともに、最大100万個の変数でビジネス問題を実行できる拡張版のハイブリッドソルバサービスを提供する。Advantageの計算能力とハイブリッドソルバサービスの拡張性の組み合わせにより、企業は高性能で現実世界に即した量子アプリケーションを初めて実行できるようになる

本日公開された論文は、こちら (『ネイチャーコミュニケーションズ』誌内) で入手できる。研究成果に関する媒体の記事はこちらから入手可能。

この発表に伴う報道の抜粋は、以下の画像またはリンクを選択して入手できる。


D-Waveシステムについて
D-Wave (D-Wave Systems Inc.) は、量子コンピューティングシステム、ソフトウェア、サービスを開発、提供するトップ企業で、世界で初めて商用量子コンピュータを提供したサプライヤーである。同社は量子コンピューティングの能力を世界的に広めることを使命としている。その使命遂行に向けて、ロジスティクス、人工知能、材料科学、創薬、サイバーセキュリティ、故障検出、財務モデリングなど多様な問題に対処する実用的な量子アプリケーションを通じて、顧客に価値を提供している。D-Waveのシステムは、NEC、フォルクスワーゲン (Volkswagen)、デンソー (DENSO)、ロッキード・マーティン (Lockheed Martin)、USC、ロスアラモス国立研究所 (Los Alamos National Laboratory) など、世界で最も先進的な組織に採用されている。本社はカナダのバンクーバー近郊で、カリフォルニア州パロアルトおよびワシントン州ベルビューを拠点として、米国で事業を展開している。公務員年金投資委員会 (PSP Investments)、ゴールドマン・サックス (Goldman Sachs)、BDCキャピタル (BDC Capital)、日本電気 (NEC Corp.)、In-Q-Telなどの優良投資基盤を擁する。詳しくは、www.dwavesys.comを閲覧されたい。

問い合わせ先
D-Waveシステム
dwave@launchsquad.com