ワシントン発, Nov. 21, 2025 (GLOBE NEWSWIRE) -- 各国のリーダーらがパリ協定の+1.5°C目標の違反回避に注力する一方で、世界の主要100都市における最も危険な夏の気象条件に関する包括的かつ最新の科学的分析によると、猛暑の気候の時期に、世界の多くの都市で夜間の最低気温が日中の平均最高気温より最大10倍の速度で上昇していることが明らかになった。
クライメート・レジリエンス・フォー・オール (Climate Resilience for All) による研究、「猛暑と日較差(昼夜の気温差)の縮小:高温多湿の気団の特徴と頻度に関する世界的評価 (Extreme Heat and the Shrinking Diurnal Range: A Global Evaluation of Oppressive Air Mass Character and Frequency)」では、1994年から2024年までの30年間の気象データを分析し、人の健康にとって最も危険だと考えられる2種類の気象条件、つまり「気団」を、暑くて乾燥した「乾燥熱帯」(DT) 気候と、暑くて湿気の多い「湿潤熱帯」(MT) 気候に分類した。
熱への曝露は、これまで、日中の高温への曝露と「平均」気温の上昇によって測定されてきた。 この研究は、急速に高まる夜間の高温の脅威を明確に考慮し、対処するため、猛暑に対する予防ならびに対応策の緊急の必要性を明確に指摘している。
世界、地域、都市レベルのデータ可視化は、このリンクからアクセス。
分析の結果、次のことが判明した:
世界の多くの地域で夜間の気温が上昇し、日中の最高気温と夜間の最低気温の差が縮小している
- 研究では83%の都市で夜間の気温が継続的に高くなっていることが示された。
- 夜間の気温上昇が最も速くなっている地域は、オーストラリアのメルボルン(乾燥熱帯性)で、5.36年ごとに1°C上昇。また、アラブ首長国連邦のドバイ(湿潤熱帯性)では8.81年ごとに1°C上昇している。
- 湿潤熱帯性気候では、サンタマリア、アピントン、ソウル、サマルカンド、パリ、クウェート市、ポートランド、アバダンで昼夜の気温差の縮小が最も大きくなっている。 地域別で気温差の縮小が見られた都市数の内訳は以下のとおり:
- アフリカ:15都市中13都市。
- アジア:22都市中18都市。
- 中南米:11都市中10都市。
- ヨーロッパ:12都市中7都市。
- 中東:5都市中5都市。
- 北米:16都市中14都市。
- オセアニア:11都市中9都市。
- 乾燥熱帯性気候では、メルボルン、アガディール、ソウル、ムンバイ、カイロ、ルクソール、クウェート市、サンティアゴで昼夜の気温差の縮小が最も大きくなっている。 地域別で気温差の縮小が見られた都市数の内訳は以下のとおり:
- アフリカ:14都市中10都市。
- アジア:22都市中13都市。
- 中南米:11都市中7都市。
- ヨーロッパ:6都市中4都市。
- 中東:7都市中6都市。
- 北米:14都市中11都市。
- オセアニア:9都市中5都市。
- 一部の地域では差異が弱いが、これはおそらく、これらの地域で評価した都市では乾燥熱帯性気候タイプがほとんど見られないためだと考えられる。
- 湿潤熱帯性気候では、サンタマリア、アピントン、ソウル、サマルカンド、パリ、クウェート市、ポートランド、アバダンで昼夜の気温差の縮小が最も大きくなっている。 地域別で気温差の縮小が見られた都市数の内訳は以下のとおり:
猛暑日の頻度の増加
- 30年間の研究期間中、夏季の湿潤熱帯性気象パターンは中南米、オセアニア、アフリカで50%近くまたはそれ以上増加し、世界全体では37%増加している。
- 乾燥熱帯性気象パターンは、同研究期間中に13%増加し、増加幅が最も大きかったのはオーストラリアの29%だった。
気候学者で、この研究の主執筆者である、クライメート・レジリエンス・フォー・オールの主任熱科学顧問のラリー・カークスタイン (Larry Kalkstein) は次のように述べている。「この分析を行う前は、最も危険な気団内で夜間の気温がいかに急速に上昇しているかはわかっていなかったのです。」 「人々が救急外来に搬送されるような夏の暑さがどのように変化しているのか、そして私たちがそれについて語る際に何を見落としているのかを理解することが重要です。」
「私たちはこの分析によって、都市や保健当局のリーダーたちが24時間の熱中症の危険性についての認識を早急に広めて活動してくれることを切に願います。 この研究は、猛暑に対する私たちの理解における重大な盲点を明らかにしています」と、クライメート・レジリエンス・フォー・オールのCEO、キャシー・バーグマン・マクラウド (Kathy Baughman McLeod)は述べた。
夜間の気温が高いと、体温が下がらず、熱中症や脱水症状、心臓血管のストレスのリスクが高まる。 暑さによって睡眠が妨げられると、日中の暑さによる疲れから身体を回復する能力が低下し、特に高齢者、女性、換気の悪い住宅に住む人々にとって、病気や死亡の危険性が高まる。
熱中症警報システムは日中の気温上昇に重点を置いており、現在、夜間の気温の影響については最小限にとどまっている。 この研究は、保健当局や政策立案者らに指針を示し、これらの変化する気象パターンを業務に取り入れ、夜間の緩和効果がほとんどない数日間の強度な現象の発生確率の増加を考慮した、地域をターゲットにした熱中症警報システムを強化するよう促している。
クライメート・レジリエンス・フォー・オールについて
クライメート・レジリエンス・フォー・オールは、猛暑の影響を直に受けている女性たちの健康、収入、尊厳を守ることに尽力する国際的なNGOである。
問い合わせ先:
ジェラルディン・ヘンリッヒ ‐ クーニス (Geraldine Henrich-Koenis)、geraldine@climateresilience.org
ケレチュクウ・イルオマ (Kelechukwu Iruoma)、kelechukwu@climateresilience.org